(最近、これからのインプラント治療方向性 反省を含めて)

過去10年間のインプラント治療の特徴は、骨移植、骨造成GBRなどの外科処置がインプラント界のメインテーマとなってきました。どちらも、歯科医師にとって、高度のテクニックを必要として、それだけならいいのですが、患者さんに強いる負担もかなりおおきくなりました。

その負担とは何かというと、激しい痛みにたえること、顔が変形したかと思われるほどの腫れが、治るのを2週間じっとまつことでした。そして、この高度な治療に対する対価、つまり、費用、治療費ということです。そして、もういちど、同じような治療を受けたいか患者さんに尋ねると、「いや、結構です、あんな大変な治療をするぐらいなら、入れ歯でいいです。」という返事がもどってくることもよくあります。
そして、その結果が何かというと、時間とともに、その移植した骨、GBRによって作られた骨が経時的に失われる、つまり溶けていくといことです。

我々、歯科医は、患者さんにこのような、大きな負担を負わせてきた、治療をしてきたことに、謙虚に反省する時期がきています。

できるだけ、負担が小さくてすむインプラント治療法、そして、結果がいままでの大きな負担をおわせてきた時よりもよくなる治療、こんな一見両立しそうにないことは不可能だと思われてきましたが、ちょっとした発想の転換で可能になることが実証されてきて、現在では確立された、もっとも安心な方法として広がりつつあります。

いままで、大きな手術をおこなってきて、それで高名になった歯科医のなかには、一回もこの方法をおこなわずに、頭ごなしに、そんなことあるはずががないという歯科医もなかにはいますが、年々少なくなってきてきます。

歯科医には派手な外科処置自体がすきな方がおられるようにおもえて、しょうがないことがあります。派手な外科処置をしなくても、他の方法で治るだろうとおもわれる場合でも大きな外科処置をする症例を紹介する歯科医もいるようにおもえることがあります。やはり、外科処置、そして特に大きな侵襲を伴う場合は最後の手段として、慎重であるべきです。

他により有効な方法がありかぎりは、骨移植、GBRはおこなわず、できるだけ、簡単に、短期間に終えるインプラント治療が近い将来、よりスタンダードなものとなるでしょう。